鋳物分野におけるベントナイトの役割

鋳物分野におけるベントナイトは生型砂の粘結剤です。
主材である珪砂を固定して鋳型をかたちづくり、
溶湯圧に耐えうるよう凝固させます。
ベントナイトの可塑性や粘結力がこちらの役割を担っています。

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【ベントナイトの基本特性】

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生型鋳造法に不可欠な材料はベントナイトですが、ベントナイトに不可欠なものは水です。ベントナイトの主成分であるモンモリロナイト粒子は、単位層が数枚程度重なっており、厚さ数nm(数10Å)、広がり100nm~1,000nm(0.1~1μm)の形状異方性で極めて大きなフィルム状の粒子であります。

モンモリロナイトは、ケイ酸四面体層、アルミナ八面体層、珪酸四面体層からなる三層構造を形成し、層と層との間を層間と言い、この層間に水を取り込んで膨潤することによって、モンモリロナイトが、十分に特性が発揮されることになります。しかし、層間に水を取り込むには非常に多くの時間が必要であることが解りました。システムサンドで熟成させることによって不良が低減できると言われる理由は、層間に水が取り込める時間が確保されるためと考えられます。

【累加混練での湿態抗圧力】

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ベントナイトは、混練を繰り返すことによって湿態抗圧力が上昇する特性を持っています。

これを累加混練効果と言い、初期の湿態抗圧力が0.6kg/cm2程度でも混練を繰り返すと20回で4倍近くまで上昇することが確認できました。

【すくわれ系膨張欠陥について】

すくわれ系膨張欠陥について.png

 

曝熱応力は、システムサンドの膨張系の欠陥の指標として使用され、曝熱応力が高い方が、

 

膨張欠陥の発生しやすい砂であることを示しております。

曝熱応力の測定は、GF社製の曝熱応力測定装置PDS製で測定する方法が一般的です。

曝熱応力は、使用する珪砂の種類によって異なると言われておりますが、当社が粒度指数の異なる珪砂を使用した結果では、粒度指数との相関は少ない結果となりました。

【てらされ系膨張欠陥について】

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システムサンドの膨張系欠陥の増減は曝熱応力と水分凝縮層引張力との関係が深いと言われ、曝熱応力は珪砂の熱膨張を示します。水分凝縮層引張力は、膨張時に発生する水の凝縮層の強度を示し、水分凝縮層引張力が高い方が、膨張欠陥は発生しないことを示しております。

水分凝縮層引張力の測定は、GF社製水分凝縮層引張力測定装置PNF型で測定することが可能です。珪砂の粒度分布との相関を取ると負の相関が得られます。古くから粒度分布の細かい砂を使用すると、膨張系の欠陥が発生しやすくなると言われる原因は、細かい砂を使用すると、水分凝縮層引張力が低下するためと考えられております。

【膨張欠陥発生図(すくわれ系、てらされ系)】

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「すくわれ系」の膨張欠陥は、鋳型の下型に発生し、珪砂の膨張力を抑制する組成が少ないときに発生しやすくなります。「すくわれ系」の膨張欠陥が発生しやすい砂か否かの評価には曝熱応力を測定する方法が知られております。これに対して、「てらされ系」の膨張欠陥は、鋳型の上型に発生した水分凝縮層の引張力が低いときに発生しやすくなります。「てらされ系」の膨張欠陥が発生しやすい砂か否かの評価方法に、水分凝縮層引張力を測定することによって推測することができます。曝熱応力、水分凝縮層引張力ともに、GF社製測定装置で測定することが可能です。

【抜型性の向上及び珪砂の熱膨張の低下について(澱粉役割)】

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澱粉を使用することにより、型の抜型性が向上し、型と鋳型とが抜けやすくなります(左図)。

また、珪砂粒子間のクッション材となり、珪砂の熱膨張を低下させる効果があります(右図)。